[L102-ME03]
授 業 期 間 2022年度 後期 授 業 対 象 指定なし 火2
科  目  名
教養演習C (教養としての自然科学:熱力学入門)
(Liberal Arts and Sciences Seminar C)
科 目 責 任 者 江川 徹 単  位  数 1単位
担  当  者 江川 徹
授 業 の 目 的

自然科学の重要な分野の一つでありながら現在の大学の初年次教育教育において必ずしも体系的に学ぶ機会のない熱力学(特に化学熱力学)について,基礎を学び身につける。

教 育 内 容

以下の事項を中心に学習する。

気体の状態変化,内部エネルギーと熱力学第一法則,エンタルピー,熱力学第二法則とエントロピー,ギブスエネルギー・ヘルムホルツエネルギーと平衡

教 育 方 法

講義形式で行う。各回の終わりに次回の内容に即したプリントを配付する。講義は主に板書を用いる。小テストを行った際は,最後に正解を示す。各授業の最後に集めるリアクションペーパーに書かれた質問には,次回授業の最初に答える。

準 備 学 習
(予習・復習)

【授業時間外に必要な学習の時間:15時間】

予習:各回の講義の前に,配付した講義資料に目を通しておくこと。

復習:講義後にノートを整理し,配付資料を読み直すこと。式の計算は自分で再度やってみること。

担当者 項目 授業内容
1 江川
【対面】

熱力学とは

化学熱力学がどのような学問かということ,ならびに本講で用いる基本的な用語(系,外界,熱,仕事,エネルギー,状態量,平衡,可逆変化,不可逆変化など)について学ぶ。

2

熱力学第一法則

熱せられたり圧縮された気体は適当な手段で他の物体に対して仕事をすることができる。言い換えればエネルギーを持つ。これが「内部エネルギー」である。この「内部エネルギー」と,その変化を表す「熱力学第一法則」を学ぶ。

気体の温度・圧力の変化を「状態変化」と呼び。温度・圧力・体積のいずれを一定に保つかによって幾つかの種類がある。これらについても学ぶ。

3

状態変化と熱や仕事の出入り

気体の状態変化に伴う熱と仕事の出入り,内部エネルギーの変化を学ぶ。

4

エンタルピー

高校化学で学ぶ「反応熱」「融解熱」などの「熱」は,より正確には「エンタルピー」と呼ばれる。ここではエンタルピーとは何かについて学ぶ。

気体の熱容量(比熱)には,「等積熱容量」と「等圧熱容量」が存在する。これらの違いについても学ぶ。

5

可逆断熱過程

気体の状態変化の過程の一つである「可逆断熱過程」について学び,これにおける熱や仕事の出入り,内部エネルギーとエンタルピーの変化を学ぶ。

6

カルノーサイクル

カルノーサイクルとは熱を仕事に変換するための仮想的な過程で,4つの過程からなる。それらの過程における熱と仕事の出入りを示す。

7

熱力学第二法則

熱力学の最も重要な法則と言っても過言でない「熱力学第二法則」を,カルノーサイクルでの熱の出入りに基いて導く。あわせて,これも重要な概念である「エントロピー」について学ぶ。これに基いて,たとえば「閉め切った部屋で冷蔵庫の扉を開け放しても涼しくならない」「冬の暖房は電気ヒーターよりもエアコンの方が効率が良い」などの身近な現象について理解する。

8

エントロピーの増大

不可逆過程におけるエントロピーの増大について学ぶ。「エントロピー増大の法則」は,しばしば名前だけが一人歩きし,さらに「エントロピー = 乱雑さ」との理解とあいまって,自宅の部屋がどんどん散らかっていくことの正当化に使われたりもする。ここでは「エントロピー増大の法則」の正しい意味を学ぶ。

9

エントロピーと乱雑さ

エントロピーは,定義としては「可逆過程で入った熱を温度で割ったもの」であるが,系の「乱雑さ」を表す量でもある。エントロピーと乱雑さの関係について学ぶ。

10

ギブスエネルギーの変化

「吸熱反応」というものが存在することでもわかるように,化学反応は必ずしも「エネルギーが減少する方向」へと進むとは限らない。変化の方向にはエントロピーも関与している。これらを統一的に扱う「ヘルムホルツエネルギーとギブスエネルギー」について,その定義と変化を学ぶ。

11

平衡蒸気圧 化学ポテンシャル

純液体の平衡蒸気圧が温度とともに増加することは高校化学でも学ぶ。ギブスエネルギーを用い,蒸気圧の温度依存性を表す式を導く。

12

化学平衡

「化学平衡」という現象(反応が途中で停止する現象)は,通常の化学の授業では「正反応と逆反応の速度が釣り合うため」と説明されるが,より正しくは「ギブスエネルギーが極小になるため」である。これについて学ぶ。

13

平衡定数の温度変化

ル・シャトリエの法則の一つである「温度を上げると吸熱反応の方に平衡が移動する」は,温度によって平衡定数が変化することによって起こる。その変化を表す「van't Hoffの等圧平衡式」を導く。

14

復習

演習問題

15

まとめ

まとめと解説

到 達 目 標

① 系,過程,エンタルピー,エントロピー,ギブスエネルギーなどについて説明し,その変化を計算できる。

② 熱力学第一法則,熱力学第二法則について理解し説明できる。

③ 「平衡」の概念について,ギブスエネルギーを用いて説明でき,平衡の移動を表す式を導ける。

成 績 評 価 の
方 法 と 基 準

試験方法:筆記試験    実施時期:試験期間内

定期試験により成績評価を行う。

学 生 へ の
メ ッ セ ー ジ
(その他注意等)

熱力学は,身近な現象から地球温暖化のような事象までを扱う学問分野ですが,元々は今から200年ほど前に「蒸気機関をいかに効率よく動かすか」を考えることから始まりました。当時は原子や分子の存在は知られてはいませんでしたが,「熱せられた気体は物体を動かすことができる」という事実から,「内部エネルギー」という考えができ,やがて「自由エネルギー」や「エントロピー」などの概念にたどり着きます。このように熱力学は,直接見たり手にとったり出来ない物理量を扱う抽象度の高い学問であり,この「抽象化」は,自然科学にとって極めて重要な要素です。実学主体の本学で中々触れることのできないこの「抽象化」に触れることが,この科目の隠れた目的です。

教科書・参考書 書 名 著 者 名 出 版 社 名 定 価(円)
参考書

Step-Up 基礎化学

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